登記簿の住所が実際の住所と異なっていた場合

登記簿の住所が実際の住所と異なっていた場合 

対処法とその流れについて~

 

弊所では、遺産承継業務、相続放棄や遺言書作成など相続、生前対策の業務を取り扱っております。なにも問題なく、スムーズに業務が完了する件もありますが、そうはいかない件も弊所では多く取り扱います。今回は、そういった案件の中から、登記簿上の住所に関連した事例をご説明します。

 

 

相続登記では、土地の所有者と被相続人が同一人物であることを確認するため、登記簿上の住所とつながりのある書類を提出します。たとえば、登記簿上の住所が記載されている被相続人の戸籍の附票や除票ですね。つながりのある書類が無ければ権利証などを提出し、なんとか法務局に所有者と被相続人が同一人物であることを証明して登記を行います。ちなみに、権利証もなければ「この土地の固定資産税は被相続人がずっと払っていたから、被相続人の所有物である」とする証明願を市に作成してもらい、法務局に提出します。通常、ここまですれば土地の所有者と被相続人が同一人物であることが証明でき、登記をすることが出来ます。

それでは、登記簿上の住所が実際には住んでいなかった住所(=間違った住所)になっていた場合はどうしたら良いのでしょうか。登記簿上の住所が実際に住んでいない住所になっていた事例、またその際に弊所が行った対処や流れについてご紹介します。

 

 

弊所に相続登記をご依頼いただきましたお客様で、登記簿を取得してみたところ、複数所有されている物件の中で一つだけ住所が異なるものが記載されている物件を所有されている方がいらっしゃいました。戸籍の附票を取得してもその住所の記載はなく、ご相続人様は被相続人の住所の履歴を把握されていなかったので、その住所については弊所で調べさせていただくことになりました。

被相続人は多くの物件を所有されており、その中の1つだけ住所が異なっていたこと、また住所の違いが一つの土地だけ「〇〇三丁目」となっておりそのほかはすべて「○○二丁目」だったことから二丁目の住所には実際に住んでおらず、誤りでは?と考えられました。

 

今回の事例では、実際に住んでいた住所ではないことが推測できましたので、「〇〇三丁目」が存在するのかどうかを最初にお調べいたしました。新潟市役所が掲載している町名一覧表を取得しましたが、そこに「○○三丁目」の記載はなく、存在しないことが分かりました。つまり、被相続人がその住所に住んでいた事実はないというわけです。誤りの場合、どう頑張っても被相続人がその住所に居住していたことは証明できません。ですので、その住所には実際に住んでいなかったことを証明する必要があります。またその際に、どの段階で住所が変更されてしまったのかということも重要になってきます。原因によって手続きが変わってくるため、どの時点で住所が変わってしまったのかを明確にしなければなりません。

 

登記簿上の住所の変化を確認する方法としては、2つ挙げられます。まず一つ目に土地を取得した際に被相続人が提出した申請書を確認すること、二つ目に閉鎖謄本を取得することです。申請者による誤りだった場合、更正登記の申請を行わなければなりません。つまり相続登記を申請する前に更正登記の申請を行い被相続人の住所を更正する必要があるということですね。しかし法務局の方でそのようになってしまった場合、住所などの簡単な誤記は簡易更正といって、申請者での間違いでないことが証明できれば申請をしなくても法務局が登記簿を修正してくれます。どちらの間違いかということによってお手続きが異なるとともにかかる費用も異なりますので、明らかにする必要があります。

 

今回の事例では、被相続人は昭和54年に申請書を提出し土地を取得していらっしゃいました。法務局では、土地の権利に関する申請書やその添付情報に関しての保管期限は提出から30年と決まっています。今回はその保管期限を過ぎていたため申請書を確認することはできませんでした。

次の対応として可能なことが、閉鎖登記簿謄本の取得です。閉鎖登記簿謄本とは、公開されていない登記簿のことを指します。滅失登記がなされ、無くなった不動産の謄本や電子化される以前の手書きで保管されていた手書きの紙の登記簿謄本のことです。ちなみに、閉鎖謄本は誰でも法務局の窓口で交付請求することができますので、皆様でも取得することが可能となっております。

今回取り上げた、住所が異なっている土地の閉鎖謄本を取得してみると、その閉鎖謄本には「○○二丁目」と記載されていました。つまり、法務局で電子化される際に「○○二丁目」が「○○三丁目」になってしまったということになります。この閉鎖謄本があれば、申請者が更正登記をする必要はなく法務局が簡易更正を行ってくれます。

 

今回ご紹介した事例では、法務局に電話してこの旨を伝えると、10日ほどで簡易更正完了の連絡をいただき、その後無事に相続登記を行うことが出来ました。

 

住所に限らず、登記簿謄本を見て、不思議に思われる部分がありましたら、申請書や閉鎖謄本を取得して確認してみるのもひとつの手段となっております。法務局へ何度も足を運ばれるのが難しい方や登記についてよく理解できない方もいらっしゃるかと思います。ご自身で確認されることが難しい場合は、是非弊所にご相談ください。