【所有者不明建物管理命令に伴う名義変更登記を行いました】
今回は、「所有者不明建物管理命令」に関連して、名義変更登記(氏名変更登記)を行った事例をご紹介します。
◆ ご依頼の内容
弁護士の先生から「裁判所から所有者不明建物管理命令が出され、管理人に任命されたので、その前提となる名義変更登記を入れてほしい」というご依頼をいただきました。
◆ 所有者不明建物(土地)管理制度とは?
この制度は、2023年(令和5年)に施行された新しい仕組みです。
全国的に深刻化している「空き家問題」や「所有者不明土地問題」への対応として設けられたもので、所有者が不明、または連絡が取れない建物や土地について、裁判所が管理人を選任し、適切な管理・処分を可能にする制度です。


◆ 今回のケース
今回の物件について、裁判所は所有者不明建物管理命令を発令し、管理人の選定手続きを進めていました。
しかし、その審理の過程で、登記簿上の所有者Aさんがすでに亡くなっているという判断がなされました。
登記簿上はAさん名義のままでしたが、裁判所は「Aさんの死亡により相続が発生している」と結論付け、決定書には次のように記載されていました。
所有者 亡A相続財産
ここで問題になるのが、この命令が出ただけで
「亡A相続財産」名義への氏名変更登記を申請できるのか?また原因の記載はどうなるか?
という点です。

◆ 法務局への確認と最終判断
当事務所でも初めてのケースだったため、法務局に照会を依頼しました。
その後、法務局から裁判所への問い合わせを経て、最終的に次のような結論に至りました。
「所有者不明建物管理命令の決定書において、不動産の所有者が『亡A』名義と記載されている場合には、その決定書をもって『相続人不存在』を原因とする亡A相続財産への氏名変更登記を申請してよい。」
登記の原因日付は、決定書に記載された日付に合わせることになります。
この判断は、**令和5年3月28日付の法務省通達(民二第533号 第2―1―(1)ウ)**に基づいています。
(参照:法務省通達PDFはこちら)
◆ 登記申請の際の注意点
登記申請時には、決定書の謄本のほかに、
**「所有者の最後の住所を称する書面」**を添付する必要があります。
これは、決定書自体には所有者の住所が記載されていないためです。
◆ まとめ
- 所有者が亡くなっている場合でも、所有者不明建物管理命令の申立て・発令は可能です。
 - その場合、前提となる登記として、決定書謄本を根拠に「亡A相続財産」名義への氏名変更登記を行うことができます。
 - 添付書類として「所有者の最後の住所を称する書面」が必要です。
 
本件のように、新制度に関連する登記手続きは、まだ実務上の取り扱いが定着していない部分もあります。実務を扱う皆様の参考になれば幸いです。
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