相続登記をせずに放置すると、固定資産税が高くなる?
「相続登記をせずに不動産を放置すると、固定資産税が高くなると耳にしましたが、それはなぜですか?」といったお問い合わせをいただきました。
建物を管理せず放置してしまうことで、固定資産税が高くなってしまう場合があります。しかし、それは相続登記をしていても、していなくても起こり得ます。
今回は、放置された不動産の固定資産税が高くなる理由と、その防止策についてご説明します。
<固定資産税が高くなる理由>
管理する人がおらず建物が放置されてしまった結果、「特定空家」に指定され、市町村からの勧告を受けた場合、土地にかかる固定資産税の優遇措置が適用されなくなるからです。
通常、住宅やアパートなど、人が居住するための家屋の敷地として利用されている土地(住宅用地)については、特例措置があり、固定資産税が軽減されています。
しかし、管理せず放置された建物が「特定空家」に指定されると、この「住宅用地特例措置」が受けられなくなり、土地にかかる固定資産税額は、最大で6倍程度、更地同様の金額まで増額となる場合があります。
では、どのような状態の建物が「特定空家」に指定されてしまうのでしょうか?
<特定空家とは?>
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
上記いずれかに該当した際、その建物は「特定空家」に指定されます。
特定空家に指定された後に自治体から改善勧告を受けると、上述の通り、「住宅用地の特例措置」が適用されなくなります。
つまり、固定資産税の増額を防ぐためには、「特定空家」に指定される条件に当てはまらないよう、不動産を管理する必要があります。すなわち、相続登記していたとしても、建物を放置し「特定空家」に指定されてしまうと、固定資産税は高くなってしまいます。そのため、相続をして取得した不動産のうち管理ができないものは、お早めにご売却・寄付・譲渡等をご検討ください。
ここまで、不動産を管理せず放置した際の固定資産税が高くなってしまう理由とその防止策をお伝えしてきましたが、相続登記の有無に関わらないということから、「建物を綺麗に管理していれば、相続登記をしていなくても大丈夫なのではないか?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここからは、相続登記をしないことのリスクを4つご説明します。
<相続登記をしないことのリスク>
- 10万円以下の過料の適用対象となります。
令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。相続人は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になりました。(令和6年4月1日より前に相続した不動産で、相続登記がされていないものについては、令和9年3月31日までに相続登記をしていただく必要があります。)
正当な理由なくこれに違反すると10万以下の過料の対象となります。
- 相続人の数が増えて権利関係が複雑化し、遺産分割協議が難航する可能性があります。
相続登記をせず放置していると、法定相続人が亡くなり次の相続が発生することがあります。本来の相続人が既に亡くなっていると、その方の子供や孫が相続人になることがあり、疎遠であったり、全く面識がなかったり等で遺産分割協議が難航する可能性があります。
- 相続人が認知症になってしまい、遺産分割協議が難しくなることがあります。
認知症などで判断能力が低下した相続人がいると、成年後見人を立てない限り、遺産分割協議を行うことができなくなります。
- 相続した不動産を売却したり、担保にとったりすることができません。
不動産は、お亡くなりになられた方の名義のままでは売却できません。相続登記をしていない限り、たとえ不要な不動産であったとしても、相続人全員に固定資産税を納める義務があり、相続人代表者に固定資産税の納税通知書が届きます。不要な不動産を手放したくても、相続登記をして相続人の名義に変更してからではないと、売却することはできません。また、相続登記をしない限り、相続した不動産を担保として金融機関から融資を受けることもできません。
これらのことから相続登記はお早めに済ませることをおすすめします。
今回は、放置された不動産の固定資産税が高くなってしまう理由とその防止策、相続登記をしないことのリスクをご紹介しました。
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